1.ブルックナーは00番、0番、1〜9番の交響曲を書いたが現在管理人が関心を持っているのは7,8,9番及び5,4,3、1番の一部と6番、2番のアダージョに限定されている。更に全曲を聴いてコメントできるのは「第8番」のみである。 2.いわゆる「版(Version)」について。原典版として「ハース版」「ノーヴァク版」そして改訂版がいくつかあるが、個人的見解としてはノーヴァク版のほうが素直な編集かなと考える。ハースはブルックナー自身の最初のスケッチにこだわり過ぎており、8番や2番の一部で自分が作曲してしまった部分がある。しかし、彼の交響曲は決定的に煮詰められているわけではないので、版にとらわれずにいろいろ指揮者の好みでオーケストレーションを変更しても構わないのではないか?(あのジョージ・セルですら8番の録音では2,3楽章で改訂版を一部つかっているのだ!) 3.最近の日本の研究動向について。朝比奈隆はハース版にこだわって日本の聴衆にブルックナーをアピールした。そして一定の成果をおさめた。しかし、その後に続く新たな成果を決して見逃してはならない。金子健志や野口剛夫による新発見の版によるトライアル、民間研究者の川崎高伸の発見による第8番第3楽章中間稿の初演等、世界に誇る成果が日本人によって達成されているのだ。これは、ある意味で現代の奇跡である。大戦後のヨーロッパの硬直した文化状況に喝をいれたこれらの業績に注目し続けよう。 |