戦友よ! 君はまだあの若かったころ、軍隊生活で初めて誇り高き連隊の隊列に加わった時のことを覚えているだろうか? 号令が千名余りの兵士達の頭上に響き渡る。「気をつけ!」君たちは緊張を帯びた静寂に包まれる。「連隊、進め!」そしてその硬直が突然解き放たれる。同時に連隊の最前列で音楽が鳴り出し君の体に電撃が走る。君の脚は自然に歩調を合わせ始める。鼓笛隊の太鼓のリズムと朗々たる横笛の音が君と戦友達を包み込む。君の耳は敏感に、そして心地よく「導入行進曲」のメロディーを追う。そして一小節ずつ正確に「行進曲」のアインザッツに向けて導かれる。突然、太鼓と横笛が中断する。ほんの一瞬の静寂、 パウゼ・・しかし次の瞬間、強烈に轟くトランペット/テューバ/トロンボーン、様々な木管楽器のトリルとさえずり、そして氷のように冷たく魅惑的な大太鼓とベッケンの響きがホルンの荒々しい後打ちに満たされて指揮を受け継ぐ。このとき初めて連隊全員が輝きに満ちて行進を始める。 君と戦友達はそれを快く感じ取った。通りに面した窓が開き街中が仕事を中断する。そして皆、歩道や広場に走りよってこの重量感に満ちた正確な軍隊の行進風景に魅了されて感激を体験するのだった。 スープには塩が必ず入っているように、軍楽は兵士達の一部なのだ。それはただ兵舎の中、訓練や演習への行進、パレードや儀杖兵のためだけのものではない。もちろん悲しみに包まれた戦友の埋葬や、重苦しい小太鼓のロールと遅い歩調の葬送パレードだけのものでもなく、連隊の祝典や舞踏演習、生誕祭、記念祭等の楽しい催しのためだけのものでもない。軍楽の分野はもっと広範なものなのである。ロシアの元帥アレクサンドル・スワロフ侯爵(1729-1800)は適切にもこう述べている。「音楽のない軍隊など、だめになった鍋のようなものだ!」 軍楽ほど国民と兵士達を結ぶ素晴らしい接着剤は他にはありえないのである。 |